◇第四章 株価の基本的な動きを学ぶ
* より効果的な保ち合い相場からの投資の方法 *
保ち合い相場の中では、売りの力と買いの力が拮抗しているため投資をおこなうのを控えるのが原則だ。
しかし、この講座を読み進める中で、チャートがどのように変化していくのかを理解しはじめると、この保ち合い相場を有効に活かした投資法もみえてくる。
チャートをみた際にまずおこなうのは、現在までの株価の流れが、①上昇にあるのか、②下落にあるのか、③保ち合い相場にあるのか、を判断することだと既に述べた。覚えているであろうか。
そのようなとき、③の保ち合い相場にあると判断する状況は多いであろう。しかし、日足チャートで保ち合い相場と判断しても、週足チャートからみてとれる、もう少し大きな流れでは上昇あるいは下落の流れの中にあることは多い。同様に週足チャートで保ち合い相場であっても、月足チャートではどちらかの流れに収まっている場合がほとんどなのである。
その上昇あるいは下落の流れの中で、株価は段を形成しながら、その方向に進行するということを忘れてはならない。上昇相場ならば、天井まで一気に上昇する相場は、ほとんどない。ある程度の上昇をしてはいったん下落し、また上昇してはいったん下落することを繰り返しながら、大きく上昇するのである。
しかし、上昇相場の買いの勢いが強いときはどうなるであろうか。ある程度の上昇を形成した後、いったん利益確定の売りが出ても、その売りをすぐに吸収してしまう程の買いの力がある場合である。
本来ならば、上昇中に頭が重たくなったと感じれば、一時的にせよ買っていた弱気筋が一斉に売りを出すため、相場はそれなりに下落する(押しの形成)。その下落がほとんどない状態が保ち合い相場だ。
すなわち、「大きく上昇後わずかに下落」を繰り返しながらの上昇相場が、「大きく上昇後保ち合い相場」となれば、相場は相当力強いとみなければならないのである。売りの力を全て吸収して再度動き出せば、一瞬のうちに大きく動く。
大きく上昇してきた位置で、目先の流れの下値斜線を陰線で下に切っても、大きな流れを表す下値斜線を切らない状態の中で保ち合っていれば、一部の弱気筋、あるいは短期投資スタンスの投資家の利益確定が終わると同時に、相場は再度大きく上昇をするのである。
本来ならば、保ち合いの上値線を陽線で力強く切ったところが買いポイントであるが、日足チャートなどから目先の動きを追う場合など、まわりの状況を踏まえた上で、寄り付き(その日の始値)や、前場(午前中の取引時間内)、前引(前場の引値)で判断して、すばやく仕掛けることも有効なのである。
例えば、買い投資をおこなう際の条件を挙げるならば
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などが当てはまれば、保ち合い相場からの投資は、有効に作用するといってよいだろう。
図27、ジャックス(東証1部8584)の日足チャートを一つの例にしてみてみよう。
2003年12月中旬からの上昇相場で、目立った押し目(一時的な下落相場)は、Fに示すところだ。
徐々に切り上がった下値斜線(支持線)を追っていくと、図の点線で示す下値斜線を陰線で下に切っている。その後いったん下落に転じたものの、Fの上値斜線を陽線で上に切って再上昇に転じた。
B、Cの付近に株価があったときの下値斜線で支持されての転換だ。その後、再度下値斜線の角度を切り上げて急騰した。
買い場ならば、Fの押し目をじっくり観測し、その上値斜線を陽線で上に切ったところをとらえるのが原則だ。しかし、この頃の日本株全体の流れは堅調で、この上昇中の銘柄を狙っていたのならば、Fという押しでの、一度きりのチャンスしか投資してはならないのかといえば、そうではない。
この章で何度も述べているように、株価が急上昇しているときでも、毎日株価が高くなっているわけではない。上昇しているわずかな日にちと、株価が動かない、より長い日にちに分かれているのである。
A、B、C、D、E、Gのところに示すような、目先の保ち合い相場をしっかりと観測することによって、その目先の上値線を超える瞬間に、一つの買いポイントがあることを認識していただきたい。
もちらん、目先の買いポイントをとらえるのだから、ある程度の利益が乗るまでは、短期投資スタンスと同様のリスク管理が必要であることは忘れてはならない。
なお、この考え方は週足チャートでも、あるいは分足チャートでも全く同様だ。どのような株価の流れを観測しているのかを、チャート上でしっかりと認識し、その中で観測できる保ち合い相場に、ここまでの考え方を当てはめれば良いのである。
図28に、三菱製鋼(東証1部5632)の週足チャートを掲載してある。4月の安値から6月の高値まで8割以上も上昇しながら、その後にほとんど下落していない状況は、再上昇時に大きな上昇に結びつくことを示唆している。チャートをみれば、その後の急騰の様子がよくわかるであろう。
少し難しく感じても、2度3度と読み返すことによって、さらに実際の相場の中で何度もチャートを観測することによって、その意味を理解していただきたい。
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