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第二章 株価について学ぶ

株価はどのようにして決まるのか、そのメカニズムを知る

我々が売買する株価とはどのようにして決まるのであろうか。

図1はソニー(東証一部6758)のある日の取り引き時間中の板である。
株価4300円で購入を希望している(注文している)株数が17300株、それより10円安い株価で購入を希望している(注文している)株数が20000株ある。逆に4310円で売却したい株数が79200株あることを示している。
最近ではインターネット取り引きが一般的になっており、刻一刻の注文状況が手に取るようにわかる。

取り引きされる株価とは、誰もが1円でも高く売りたく思い、1円でも安く買いたいと思うギリギリの選択の中で決定される、その時の、その株の価格である。

では、これだけでその後に株価が上昇するか下落するかがわかるであろうか。実際にはここに示すような指値の他に、成り行き(特に買値、売値を指定せずに注文をだす方法)で株式を売買する投資家がいることを忘れてはならない。
利益確定の指値が買いの指値よりはるかに多く注文されていても、株価はどんどん上昇することはよくあるのだ。そのような状況では指値の買い注文を出しても買うことはできないだろう。

ここで、事実を一つ認識する必要がある。

ある株価で10万株の取り引きが成立したとき、売られた株数と買われた株数が同じであることはいうまでもないだろう。しかし、売った投資家の人数と買った投資家の人数は違うのである。

テレビや雑誌などによる、その会社が倒産の危機にあるというさまざまな情報が、多くの個人投資家の売りを呼び、1000人の個人投資家が1000株ずつ売れば100万株の売りだ。一方、その倒産の危機にある会社を、海外の優良企業が買収する可能性が高いという分析をした一部の機関投資家が、たった一人で100万株を買うこともあるのだ。

だが、我々がその情報(企業買収の可能性および、誰が何株売買したか)をリアルタイムで知ることは不可能に近い。むしろ、中途半端な情報が耳に入っても、その結果は失敗につながることが多く、仮に情報を知ることができたとしても、適切な投資判断を下せるかどうかは、はなはだ疑問である。

先に結論をいえば、株式投資で利益を上げるという目的からすれば、それらの情報を個人投資家は知る必要はないといえるのである。その理由はこの講座を読むうちにご理解いただけるかと思う。

株は、売る人(投資家)がいるから買える―相手は、これ以上の株価の上昇が見込めないから売るのである

我々個人投資家がまず認識しなければならないことをまとめてみよう。
左の表と右の表を参照していただきたい。

ここまでを読めば、株式投資をやってはならないとか、株式投資でコンスタントに利益を上げることは困難であると誰もが感じるであろう。

その通りである。今までと同じような投資法で投資をおこなっても、コンスタントに利益を上げる(期間損益を大きくプラスにする)ことはできないであろうし、逆に大きな損失を生むことは、ほぼ間違いないのである。

では、我々個人投資家はどうすればよいのだろうか。

ついては、もう少し株価について学んでいただきたい。

株価は何が決めているのであろうか。毎日配信されるさまざまなニュースが決めているのであろうか。それとも、その会社の業績が決めているのであろうか。

答えは簡単だ。株式市場に参加している、あるいは参加しようとしている全ての投資家が決めているのだ。つまり、人間が決めているのである。

欧米では機械によるシステム売買も盛んだが、どのような動きになったら売り、どのような動きになったら買うかの指示を、最終的に人間がプログラムを組んで決めている以上、やはり人間だ。

投資家(人間)はさまざまな情報を入手する。例えばトヨタ自動車という会社を例にして考えてみよう。株価に影響を与えそうな材料を列記してみれば

① 会社の業績はどうか。利益は増えているのか減っているのか。決算はどうか。
② 為替は円高に振れるのか、円安か。
③ 労使関係はどうか。賃上げはおこなうのかどうか。
④ 自動車の材料の価格がどう変動しているのか。
⑤ 日本とアメリカとの貿易交渉はどうなっているのか。
⑥ 台風がトヨタ自動車の工場を直撃しそうだが、影響はどうか。
⑦ 海外の工場で火災が発生したが、その影響は。
⑧ トヨタ自動車の系列会社が倒産しそうだ、あるいは業績が急回復しているとか。
⑨ トヨタ車が自動車レースで優勝したとか、あるいはマシントラブルが頻発するとか。
⑩ 年金の代行返金で株式が売却されるらしいとのことだが。
⑪ 日本の株式全体が上昇にあるのか、下落にあるのか。
⑫ 社長の健康状態はどうなのか。
⑬ アメリカでテロが発生したが、その影響は。
・・・・・・

①の会社の業績一つをとっても、販売実績、販売見込、売上、利益、利益率、その変化率・・・などその項目は更に多岐に渡り、何倍にも膨れ上がる。株価が影響を受けると思われる情報、ファンダメンタルズを全て書きだすことは不可能といっても過言ではないのだ。(詳しくはこちらを参照)

これらの情報を知った人間(投資家)がそれぞれ分析し、売りか、買いかを決定しているのである。

その結果として、取り引きされた株価とは、あらゆる投資家がその瞬間のさまざまな材料など、その株を取り巻く全ての事象を加味して決められた「価格」といえるのである。

左図、クボタの例は、その好例だ。

2005年6月29日夕方、工場一帯でアスベストによるとみられる死者が出ていたとの会社側の突然の発表に、多くの個人投資家は戸惑うのである。何度も何度もニュースを聞いて、時間の経過と共に事の深刻さに唖然とし、翌日に成り行きで売り注文を出してしまうのである。

プロは違う。可能な限りの情報を収集し、アスベスト問題が会社経営に及ぼす影響、好調な業績にどれ程のマイナス要因になるのか等、あらゆる角度から瞬時に検討し、「投資方針」を修正する。
その結果、それでもクボタは「買い」ならば、継続的に買ってくるのがプロなのである。

さまざまな材料が株価をどのように変化させているのかは、かなり時間が経たないと判断できない。好材料と判断されて報道されても、その報道をした人が好材料と判断しているだけで、実際に取り引きをおこなっている投資家が、その情報をどのように判断したのか、それ以外の情報を加味しているのかなどということはわからないのである。

我々個人投資家が、プロの投資家よりはるかに少ない情報、遅い情報、不確実な情報、そして乏しい分析を元に売買して、株式投資でコンスタントに利益を上げることは、不可能に近いということがわかっていただけたかと思う。

しかし、我々個人投資家だからこそ勝てるヒントがここまでの話の中に入っていたことに気付いたであろうか。

 

相場とは、世の森羅万象を織り込んだもの。あらゆるニュース、分析結果は「買い」「売り」の材料となり、実際の売買に反映される

 

       

 

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