◇第三章 株価の変動をグラフにした「チャート」とは
* 株価チャートと天気図 *
はじめて株式投資をおこなおうとしていたり、まだ株式投資をはじめたばかりの投資家にとって、何だか難しそうに感じるのがチャートだ。
できることなら、勉強したくないであろう。実際に、ほとんどチャートをみないまま何十年にもわたって株式投資をおこなっている個人投資家も多い。
ここで、もう一度チャートについて考えてみよう。
明日の天気がどうなるのかを知りたいとき、天気図をみて気象現象を把握することは大いに役立つ。
冬型の気圧配置となれば、日本海側の天気はぐずつき太平洋側は乾燥した晴天が期待できる。そのような時の「太平洋側の明日の天気は晴れ」という予報は高い信頼性があると感じているであろう。
逆に梅雨前線が太平洋岸に停滞しているとき、一時的に前線活動が弱まる梅雨の晴れ間を予報されても、その信頼性は低い。
我々は知らず知らずのうちに、どのような状況ならばより高い確率で「晴れる」あるいは「雨天」であるということを判断しているのである。
もちろん、明日(未来)の天気だから絶対ということはないのにだ。
株価チャートの見方も基本的には同じだ。同じような価格帯で株価が停滞しているような状況では、今後株価が上がるか下がるかの予測はなかなかできない。したところで、その信頼性は低いのである。梅雨前線が停滞しているときと同じような状況だ。
逆にここ数ヶ月間、株価が上昇している流れにあれば、1週間後に株価が上昇している可能性はやはり高いのである。
では、そのような株価の流れをみて、より多くの利益をより確実に得たいならばどうすればよいのだろうか。
勢力を増してきた太平洋高気圧によって、梅雨前線が一気に北へ押し上げられると梅雨明けだ。梅雨明けをすれば、今までのぐずついた天候がうそのように晴天が続く。流れが変わったのである。より多くの安定した晴天を得たいのならば、流れが変化した瞬間をとらえるのがより確実だ。
株価チャートなら、同じような価格帯に長期間あった(保ち合い)株が、あるときその価格帯を上に抜けてきたのである。その流れが変わった瞬間をとらえて買えば、その後の株価の大きな上昇によって、より多くの利益をもたらしてくれる可能性が高いのである。
もう一つ話を付け加えよう。流れが変わった瞬間に対応できなかった場合だ。「流れが変わった」というポイントをおさえながら、その時は自信がなくてズルズルと見過ごすということがあり得る。このようになったら、様子見(投資をしない)が原則だ。
大きく上昇し続ける株価をみて、我慢しきれずに購入すれば、それこそ高値をつかむことになりかねない。その後の下落が一時的な下落(天気ならば戻り梅雨や台風)ならば、まだ期待が持てるが、気付いたら大きく下落する流れ(秋雨前線)の中にいたとなると、致命的だ。
これからは、流れをしっかりみて、その変化したポイントを確認していただきたい。
更に、1年の中で、明日の「晴れ」の天気を確実に手に入れることができるのは限られる、ということも認識していただきたいのである。1年間には多くの晴れの日があるが、より確実に明日、あるいは数日先の晴れの日を予測できることなどそう多くはない。
株式も同様だ。上昇、下落はいくらでもあるが、さまざまな銘柄の中で、さまざまな流れが変化したところで、より確実に、少しでもリスクの少ない買い場を買っていけばよいのであり、たった1つの銘柄の、明日、あるいは1週間後に株価が上がるか下がるかだけを常に考えて、それだけに投資する必要はないのである。
これから株価チャートをどのように観測すればよいのかを学んでいくが、自分が納得できるところから実践していけばよいのであり、わからない場合にはあせらずに時間をかけてじっくり理解していただきたい。
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