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第三章 株価の変動をグラフにした「チャート」とは

株式市場は戦場である。売り方軍と買い方軍の力関係を見極めよ

株式市場は売り方と買い方が真剣にぶつかりあって、株価が下落あるいは上昇する戦場である。ただ、実際の戦争とは違い、我々はどちらについても良いのである。より確実に前進する勢力につくことが、株式投資に勝つ秘訣といえよう。
では、具体的にはどのように個別銘柄のチャートをみればよいのだろうか。

日本株全体を表す指標の一つであるTOPIXが、バブル後の最安値770.46ポイントをつけたのが2003年4月14日である。
多くの個別銘柄は、その日を境にして大きく上昇に転じた。ただ、いくつかの銘柄(群)は、日本株が底をつける前に上昇に転じ、その後に日本株全体を大きく上昇方向に牽引(けんいん)したのである。

住友重機械工業(東証1部6302)月足チャートその中の一つ、住友重機械工業(東証一部 6302)の株価反転時を、右図の月足チャートで確認してみよう。

1989年のバブル時の高値から、2001年12月の安値をつけるまで、株価は長期間に渡って大きく下落してきた。実に高値の30分の1程度まで下落したのである。
その後いったん上昇するものの、日本株全体の下落に合わせて再度下落したのが2002年6月から2002年末にかけてだ。
その後に株価は大きく上昇し、2007年初めには、バブル時の高値とほぼ同じ株価水準にまで至ったのである(2007年3月現在)。

この大底を形成した際に、売り方と買い方の間には、どのような戦いがあって、どのような時にその勝負の行方が見えてきたのかをチャートから追ってみよう。

チャートをみていない投資家は、高値1337円の10分の1、133円になれば、「安い」と感じるであろう。ここから下がっても高が知れていると買えば、わずか3ヵ月後にはさらに株価は半分になってしまうのである。
もし、チャートをみていれば少なくともここで買いを入れることはしないであろう。株価の流れは強い下落途中であると判断できるからだ。
では、どこで買いを入れるのがよいのだろうか。

右図、月足チャートをじっくりみていただきたい。①の上値斜線(基本的な斜線の引線法は次回基礎講座)が表す下落の流れが変化したところが③である。
この③は一つの買い場である。しかし、このような急落後の上値斜線切り③は、いったんは上昇しても、結果的に下落途中の一時的な上昇(戻り相場という)になる場合も多い買い場だ。そのような可能性(高いリスク)が相当あるという認識で出動しなくてはならないといえよう。

その後にチャートの変化をじっと観測していると、⑤のごとく株価は上昇するものの、その勢いを表す下値斜線の角度は、先の下落時①よりやや緩いということが確認できよう。日本株全体の動きもまだまだ弱く、陰転すればいったん利益を確定するのは当然ともいえる。

この辺りの上昇で利益を取るのは、実際には相当難しい。このチャートはわかりやすいものを掲載しているので、それ程でもないように感じるであろうが、底から上昇に転じる際(あるいは上昇から下落に転じる際)には、売り方と買い方の激しい攻防があり、なかなか一筋縄ではいかないのが普通だからだ。

ただ、その激しい攻防も何度か繰り返されていくうちに、状況は大きく変化する。例えば図中、2002年6月からの2度目の下落の勢いは、明らかに前回(2001年9月から2002年1月)の下落時より緩いことがわかるであろう。同じような下落値幅を、前回より2ヶ月間多い7ヶ月間かかって下落したことがわかる。

柴田罫線理論でチャートを観測する際の、基本的な考え方がここにある。つまりこうだ。
大きく下落してきた株価が、反転した際(上値斜線切り)に買いサインは出現する。ただ、そこから上昇した株価が再度下落に転じたときに、明らかに「売りの力」が軽減している様子がうかがえるのであるならば、その下落の流れが上昇に転じたところ(上値斜線切り)は、前回より、より上昇する可能性が高いと判断するのである。

単に買いサイン、売りサインなのではない。いかにリスクの少ない、あるいはより可能性のある「買い場」あるいは「売り場」を見極めることができるかが重要なのである。その後のリスク、利益は大きく変わるということを知っていただきたい。

住友重機械工業(東証1部6302)日足チャート別のチャート(右図)で再確認してみよう。これも住友重機械工業(東証一部 6302)だ。前図が月足チャートであったのに対し、これは2001年12月の安値からの反転時を、細かく表した日足チャートである。

大きく下落した株価の流れを表したのが上値斜線⑦だ。圧倒的に売りの力が強い様子がわかるであろう。しかし、いったん上昇した後の下落時は違う。同じ1ヶ月間ほどの下落期間なのに、下落幅は3分の1程度しかないのである。売りの力が小さくなったことを確認した後の、上値斜線切りで出動した方が、より大きく力強い上昇が期待できるのである。

その後、さらに大きく上昇した株価が、利益確定の売りを浴びせられた際、⑨の下落時はさらに顕著だ。同じく1ヶ月間ほどであるが、ほとんど下落していない。株価はその後に大きく上昇したのである。

みているチャートが月足だろうと、日足だろうと、あるいは1分足であろうと、考え方に全く違いはない(みているチャートの種類と投資のスタンス、リスクについては別の回に掲載予定)。売りの力と買いの力がどのように戦っているのかを知ることが重要であり、その力が逆転したときに、どのような状況で逆転したのかを知ることが肝心なのである。

流れが変化したところ、あるいは勝負が付く急所を見極めるのが柴田罫線理論による投資法だ。野球の試合を観戦しながら試合の行方をシミュレーションするのと同様に、原則の動き、例外の動きなど、実際には多くの見方(分析法)が含まれている。
今回の講座で、まずはその最も基本的な考え方をしっかり理解し、チャートから市場に参加している投資家の行動を読み解く、第一歩としていただきたい。

 

まず、売りの力(下落時)がどのように変化してきたのか、
買いの力(上昇時)がどのように変化してきたのかを観測せよ

 

     

 

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