◇第四章 株価の基本的な動きを学ぶ
* 押し、戻りの深さと上昇下落の値幅に注目せよ *
株価は上昇、あるいは下落する際に、段をつけながら上昇下落することを学んだ。上昇中には「押し目」をつけながら上昇し、下落中には「戻り相場」をつけながら下落する。では、この「押し目」「戻り相場」について、もう少し考えてみよう。
赤白の二組に分かれて綱引きをしていることを想像していただきたい。仮に白組が手前に力強く引いている状態だとしよう。「オーエス」と力強く引いた後に、次は赤組が「オーエス」と引く。
例えば、白組が一回の「オーエス」で5m引いたとしよう。次に赤組が引いたときに5m戻されれば、どう感じるであろうか。「赤組は手ごわいぞ」「互角の勝負だ」と感じるであろう。勝負の行方は不透明だ。
しかし、白組が一回の「オーエス」で5m引いた後、赤組が引いても1mしか戻されなければどうだろう。次に白組が引けば何m引けると考えるだろうか。そう、また5m引けると考え、実際にそれに近い数字で引っ張ることができるのである。
株価の上昇も、全くといってよいほど同じだ。一回の上昇で300円上昇し、その後の下落(押し目)で50円しか下落しなければ、再上昇時には更に大きく上昇する。逆に、それまでは順調に上昇してきた株価が、ある時下落に転じた際、直前の300円の上昇値幅に対して250円も下落すれば、どうであろうか。その後の上昇は一筋縄では行かない場合が多くなるのである。
この単純な比較が、綱引きをしているときには敏感に感じ取れるのに、株式を売買している際にはなかなかうまくできない。
上昇時、下落時の比較(相手チームと自分のチームとの比較)、そして前回の上昇時と今回の上昇時の比較(自分のチームの力がどう変化したか)を観測することが、その後の行方がどうなるのかを想定するのに、大変重要なのがおわかりだろう。
右図に、綱引きをしている際に、そこまでの動きからその後の動きをどのように見ればよいのかを、簡潔にまとめた表を掲載してある。過去の株価の動きを、今後の動きを想定するのにどのように利用すればよいのかと、ほとんど同じなので参照していただきたい。
特に、表の上段①と下段②の違いを、しっかり認識していただきたい。
①は、相手の力(売り方の力)と自分の力(買い方の力)を比べているのである。一方②は、前回の自分の力(前回の買い方の力)と今回の自分の力(今回の買い方の力)を比べているのである。
チャートをみている投資家の中で、①のような比較を考えている投資家は結構いるものの、②の比較をおろそかにしている場合が多い。しかし、よく考えていただきたい。どちらがわかりやすいかということを。
物事が今後どのように変化していくのかを想定する際に、それまでの変化を分析することは言うまでもない。
特に相手がいるような場合には、第一に比較しなければならない対象を間違えやすい。比較する際に、わかりやすいのは他人と自分の力を比較するのではなく、自分の力がどのように変化していったのか、すなわち自分自身の比較である。
例えば巨人対阪神の野球の試合を考えてみよう。自分の応援する巨人軍側から試合をみていれば、徐々に相手の投げるボールに打者のタイミングが合っていく様子や、選手の表情など微妙な変化から、「よし。この試合は勝てるぞ。」とか「流れは巨人だ。」などと感じ取ることは、それ程難しくない。今後の行方を左右するようなわずかな違いも比較できる。これが、自分の力の変化だ。
一方、相手の力との比較はどうであろうか。巨人軍と阪神軍の選手の表情を見比べて、どちらのチームが勝つか判断することは、非常に難しいと言わざるを得ない。もしかしたら、阪神軍の選手は無表情の人が多いかもしれないのだ。自分の力(応援する巨人軍)と相手の力(阪神軍)を比較することは簡単ではないのである。
株価の比較も同様だ。
進む方向(上昇あるいは下落)が違うということは、全く逆を向いている投資家同士が戦っているということだ。
片や株価は上昇すると考えて買い進め、片や下落すると考えて売るのである。自分とは方向が逆の力と、自分の力を比べることがいかに難しいかはわかるであろう。
基本は、まず自分の力(上げの力同士、あるいは下げの力同士)を比べることなのである。
今後、チャートをみる際には、表の②の比較を第一に(わかりやすい)、①の比較をその次に(微妙な場合には特に難しい)おこなっていただきたい。
この章で、注目しているのは値幅だ。売りの力が強いのか、買いの力が強いのか、これまで注視してきたのは主に、株価の流れの強さを表す斜線の角度だ。前回の上昇時に1ヶ月で300円上昇したのに、今回の上昇時は50円しか上昇しなかった。
だから、今後の下落は要注意だ、というものだ。この変化は斜線の角度変化を追えばよくわかる。
同様に、値幅も追う必要があるのだ。上昇時の値幅はどのように変化したのか、下落時と比べてどうか、その変化は我々に重要な情報を提供してくれる。
なお、これまでみてきた斜線の角度も、基本的には同じ考えだ。まず比較するのは前回の上げの斜線の角度に対して、今回がどうかなのである。
なにげなく読んでしまえば、なるほどと思いながらあっという間に終わってしまうであろう。
しかし、ここに記述したことは本当に重要なことだ。相場(チャート)をみた際に、この違いを見極めることができる投資家とそうでない投資家の違いは、その後の利益に大きく差が出るといっても過言ではないのである。
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