◇第四章 株価の基本的な動きを学ぶ
* チャートをみて現状を把握(はあく)する *
売り方と買い方が戦っている、その最前線がどのように動いてきたかを記録しているのがチャートだ。
そこに参加する全ての投資家は、極限の状態で売りか買いかを判断する。1円でも有利な条件で売ろうとしたり、買おうとしたりするのである。まさに戦場といってよいだろう。
目先の動きだけを追っていると、その目先の流れが変化したとき(目先の斜線を切ったとき)に、売ったり買ったりをすぐにおこないたくなる。
しかし前章で述べたように、段を形成しながら上昇していくということ、上昇中にも一時的な下落相場(押し目)があるということを忘れないでいただきたい。下値斜線を下に切っても、すぐに上昇に転じる可能性、あるいはほとんど下落せずに再上昇する場合も多い。斜線を切ったからといって安易に出動することは禁物だ。
では、どのようにチャートをみて判断すればよいのだろうか。
野球やサッカーのようなゲームでも同じだが、どちらのチームが勝つかを判断するときに、その瞬間のスコアや各選手の情報だけで決めたりはしないだろう。最も重要視するのは、この瞬間に至るまでのゲームの流れを、しっかり分析することであろう。
チャートは過去の戦いの軌跡である。ゲームでいうならば、詳細なスコアとでもいえばよいだろうか。まずは、チャートから現在に至る大きな株価の流れを分析するのである。
第一に、チャートをみて次のいずれかに分類していただきたい。
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図12を参照していただきたい。
この週足チャートをみたときに、Aの時点で流れはどうかと聞かれれば、大きい流れは下落途中と判断できよう。もちろん、日足や分足などで細かく分析すれば、いくらでも細かく分けることはできる。しかし、大きくみたときに、図に示すように、大きく下落して、いったん上昇し、再度大きく下落している途中にA点があることに異論はないであろう。
一方、図13、14の週足チャートは、それぞれどう判断できるであろうか。図13ならば、下落から転じた後の強い上昇途中、図14であるならば大きく上昇した後の下落途中といえよう。
これをしっかり認識しなければならないのである。本来ならば、きちんと斜線を引線して判断すれば、よりしっかりと株価の流れを認識できる。
図12~14は、全て大和證券グループ本社(東証1部8601)だ。
各図のA、Bで図は重なる。
図12で大底かと思われた800円付近の株価から、図13に示すように、更に株価は3分の1以下に下落したのである。個人投資家は安くなれば買いたくなる。しかし、流れに逆らった際の投資のリスク、底を狙うことの難しさをしっかり認識していただきたい。
図13から図14に至る株価の流れも全く同様だ。急騰して株価が3倍以上になったところから、図14に示すように株価は更に倍になったのである。同じように多くの個人投資家は、急騰すれば売りたくなる。
もちろん、信用売りなど仕掛けようものなら、大損だ。
流れに逆らっての投資をおこなっていけないわけではない。ただ、流れに逆らっての投資をおこなうときには、それなりのリスクを認識する必要があるのだ。
図15、ミツミ電機(東証1部6767)の月足チャートも同様に判断していただきたい。株価が同じような価格帯に長期間あるということは、そこで投資してもやはり動かないことが多いのである。投資効率は悪い。一般に保ち合い相場といわれている相場(詳しく別途解説予定)だ。
図12~15は、わかりやすい例題ではある。しかし、大きな株価の流れがわからない銘柄はまずない。
多くの個人投資家はそれさえも確認せずに売買をしてしまうのである。
大きな株価の流れは、そう簡単に変化はしない。下落途中にあれば、そこで買うということの危険性、上昇途中であれば、そこで空売りをするという危険性、株価が一定の値幅の中でほとんど動かないのならば、売っても買ってもなかなか利益がでないであろうということなど。いわれてみれば当然のことと思うであろうが、必ず認識しなくてはならないことだ。
最後の④「よくわからない」は、チャートを見はじめた初心者のための選択肢だ。
投資の目的は利益を出すことだ。国内株式およそ五千銘柄もある投資対象銘柄の中で、わかりやすい動きをしている銘柄だけに投資をおこなえばよいのだ。野球の試合でも、「今日は流れがさっぱり読めない。どちらが勝つか全くわからない」というときもあるだろう。
株価の流れがよくわからない銘柄に投資してはならない、ということも忘れないでいただきたい。
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