◇第四章 株価の基本的な動きを学ぶ
* 株価が動いていない(保ち合い相場)時間を見極める *
徐々に基礎講座を進めると、同じような話が何度も繰り返されるように感じる。
チャートの見方をさまざまな角度から記述しているが、これは多くの内容が複合的に重なり合いながら展開される所以である。一番初めに何を学ばなくてはならないか決める必要は全くない。
同じような話を、様々な角度から理解することを繰り返し、少しずつ全体をつかんでいただければ結構だ。
今回は、株価の動いていない相場、すなわち保ち合い(もちあい)相場について学んでみよう。
株価が長期間にわたって上昇あるいは下落している銘柄でも、実際に株価 が動いている時間(期間)はほんのわずかだ。
図16、信越化学工業(東証1部4063)の日足チャートをみていただきたい。大きくみた株価の流れは上昇だ。今回注目していただきたいのは、株価が動いている時間(日数・日柄)だ。株価が「動いている」と感じる日数はほんのわずかであることがわかるであろう。
図17、パラマウントベッド(東証1部7960)も同様だ。
何日にもわたって、ひたすら上昇し続ける銘柄も当然ある。しかし、ほとんどの銘柄は8割程度の動いていない時間(保ち合い相場)と、2割程度の動いている時間で、株価は上昇下落をするのである。図16のように、5ヶ月間程で4割近くも急上昇する銘柄でさえ、その上昇時には小さな保ち合い相場が多くある。
これが、週足や月足チャートで判断した株価の流れが、保ち合い相場にあるような場合には、その比率はもっと高いと認識すべきであろう。
動いていない相場がわかれば、動き出すところがわかる―。すなわち出動の急所がわかるわけだから、この動いていない相場をしっかりと見極められるかが大きなポイントなのである。
これが昔から保ち合い相場を制するものが相場を制するといわれる所以だ。
それでは、保ち合い相場についてもう少し詳しく解説しよう。
保ち合い相場とは、売りの力と買いの力の大きさが釣り合っている状態だ。中長期間に渡り、ある一定期間以上の保ち合い相場だと判断すれば、原則として投資は留保だ。
国家同士の緊張関係を例にしてみよう。
長い年月にわたって緊張状態にあったり、現在も緊張状態にある隣国関係というものは数多くある。比較的浅い歴史の中でも、南北ベトナム、東西ドイツ、そして朝鮮半島情勢などもそうであろう。
その緊張状態(保ち合い)の中では、いつ、どちらの国が制するのかなど誰もわからないのである。しかし、その緊張状態(保ち合い)が長ければ長いほど、その緊張状態(保ち合い)が崩れた時には、崩された方向に一気に動くのである。
相場も同様だ。保ち合い相場において投資をおこなっても、なかなか利益は出ない。しかし、その保ち合い相場が、どちらかの方向に放れたときには、放れた方向に一気に動く。その方向に乗るのが鉄則なのである。 投資家の中には、この保ち合い相場だけをひたすらじっと観測し、1年に数回のチャンスにすかさず乗るという投資法だけで、高いパフォーマンスを維持し続ける投資家もいるのである。
このような保ち合い相場だが、その形状、意味合い、そしてその観測法は、決して一様ではない。この柴田罫線理論基礎講座の中で、是非覚えていただきたいのは、次の2つの代表的な保ち合い相場だ。
一つは、上値と下値がある程度決まった中で、売りの力と買いの力が拮抗(きっこう)している平行な保ち合い相場と、もう一つは、その拮抗幅が徐々に狭まっていく三角保ち合い相場である。
上値と下値が決まっているということは、株価の流れに上昇方向あるいは下落方向といった角度がなく、水平方向に進行しているということだ。すなわち、上値斜線、下値斜線が示す株価の流れの角度が、どんどん緩くなり、最終的に水平になった状態と考えていただきたい。
三角保ち合い相場は下値斜線が徐々に切り上がり、上値斜線が徐々に切り下がる状態だ。
いずれの保ち合い相場もたいへん重要で、これだけを認識するだけでも、その後の利益に大きな違いを生むことになるので、しっかり学んでいただきたい。
次回以降に、もう少し掘り下げて保ち合い相場を解説してみる。
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