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第四章 株価の基本的な動きを学ぶ

平行な保ち合い相場

 

平行な保ち合い相場について、もう少し詳しくみてみよう。
平行な保ち合い相場は、どの程度の値幅に株価はあるのか、保ち合い相場になってから、どれ程の時間が経っているのかを認識する必要がある。

上値と下値の幅(値幅)が狭ければ狭いほど、相場は緊張状態にあると考えられる(図19参照)。

更に、保ち合い相場は、時間の経過とともに拮抗(きっこう)のエネルギーが蓄積されていくと考えていただきたい。値幅が小さければ、値幅が大きいときに比べて、より少ない時間の経過でも強いエネルギーが蓄積されていく(ズルズルと長期間にわたって下落した後の、誰も見向きもしなくなった大底の相場は除く)。

具体的に、平行な保ち合い相場を何通りかに分けてみよう。

野球の試合でも、0対0という緊迫した状況で終盤に近づいてくれば、どちらか勝つかの判断は先取点を取ったほうであると予測を立てるだろう。
そして、実際の試合は概ねその通りに動く。緊張感の高い試合になればなるほど、それが崩れたときには、先に点を取ったほうが更に加点し、試合が終了してみれば5対0のような試合も多い。

そのような試合ではなく、2点を取ったら、3点取り返して、また2点取って、2点取り返して・・・のような試合の行方も不透明だ。そのような試合の行方が終盤に決定的になるのは、相手が戦闘意欲を無くすほどの大量点を一気に取ったときであろう。
更に、初回から7点を取って、今日の試合の行方は決定的だと思ったら、その裏に8点取り返した・・・のような乱打戦の試合もあるのである。

このような保ち合い相場の観測方法と出動ポイントは、次の通りだ。

株価の動きが同じような位置で停滞(保ち合い相場)していると判断したら、上値(斜)線、下値(斜)線をすかさず引線するのである。
その後、株価がその中にあるときは静観し、それらの抵抗線(上、下値線)から放れた際に、その方向についていく(出動する)のである。

図20、千趣会(東証1部8165)週足チャートの例に示すA~Eのところを参照していただきたい。

なお、ある程度の値幅と時間(保ち合っている日数)があれば、注意深くその中の値動きを観測することによって、その保ち合いがどちらに放れるのかがみえてくることもある。保ち合いの中での株価の流れを、力の強弱の観点から分析して判断するのである。

保ち合い相場について、一つ注意をしよう。ある程度の上昇下落がある保ち合い相場は、往来相場(ボックス圏相場)といわれる。その中での投資法だ。

そのような相場ならば、その値幅の中で利益を出すことも、理論上は可能に感じるし、実際にそのような投資法を紹介している本なども多い。
往来相場の高値になったら売り、安値になったら買うという手法だ。

しかし、一見簡単そうな往来相場での投資だが、初心者は、まず止めたほうがよい。
保ち合い相場あるいは往来相場とは、買いの力、売りの力が激しく拮抗しているのである。どちらが勝つかわからない、緊迫した戦いの中で、安値で買い、高値で売るという行為がどのような意味を持つのか、確かな理解が求められている。

この投資手法は、拮抗した相場の中で、この一線を越えたら大きく動く限界地点で、反対方向に仕掛けることを繰り返す手法だ。

わずかな値幅を稼ぐのに、大きなリスクを背負うのである。限界地点で反対方向に投資した直後に保ち合い相場を放れれば、その損失は計り知れないものとなってしまうのである。

図21、日経平均株価225種の2005年8月の保ち合い相場を上放れする際の動きを参照していただければ、往来(保ち合い)相場の高値(12000円付近)で信用売りを仕掛けた際のリスクがよくわかるであろう。

実際の株価の流れは、野球の試合がそうであるように、必ずしも規則正しく上昇下落するわけではないし、いつかは、その値幅を超えて大きく上昇下落をする可能性が大きいということを、決して忘れてはならないといえよう。その地点こそが仕掛けるポイントなのである。

なるほど!(コラム)

図20千趣会の週足チャートをみて、第10回で学んだ「相場は段をつけながら下落する」とするならば、戻り相場はどこにあるのか・・・という疑問を持った方もいるであろう。

この場合、「A」「B」「C」「D」の保ち合い相場がそれにあたる。本来、大きく下落すると、売り方の買い戻しや、直近の高値を覚えている。投資家の割安感などから、株式は買い戻され、株価は上昇し、戻り相場をつける。

しかし、その様な買い方の一時的なエネルギーを、全て吸収してしまう程の売り方がいればどうなるであろう。本来上昇してもおかしくないところでも全く上昇しないのである。

例えばある会社の株式を大量に保有している企業が、独自の分析の結果、その株を全て売却しようとしたとき、株価が急落途中ではなかなか売れない。買い手がいない市場では、わずかな売却で株価は大きく下がるからである。

しかし、急落すれば売り方の買戻しや、個人投資家などが割安感から買いを入れる。このようにして買い玉が多くなれば、その株を売りたい企業にとっては絶好の売り場となる。今まで売れなかった株式が売却できるからだ。そのような、売り方の圧倒的な力があるときの戻り相場は、上昇しない。

Aの段階なら1500円あるいは1600円以上は「売り」、Bなら1150円以上は「売り」という大口の投資家の方針があれば、それ以上には上がらないのである。

もちろん、上昇時にも同様のことがいえる。数ヶ月で3倍と急騰したら、多くの個人投資家は売却する。本来は急騰した後には急落があるといってよいだろう。しかし、その急騰した位置で、ほとんど下がらないで保ち合っているならば注意が必要だ。その企業の株価は更に上昇すると計算したプロが、大量の株式を購入しているのである。その売りが一巡すれば、買い方のエネルギーだけが残る。株価はさらに急騰するのだ。

常にチャートから、現在、その株を取り巻く状況を分析するのである。

重要なのは何で下がらないのかではなく、下がらないという事実をしっかり確認して、その後の買いポイント(保ち合いを上に切ったところ)を逃さないということだ。

 

保ち合い相場(動かない相場)の中で勝負をするな!
保ち合い相場から動き出した(放れた)ところを狙え!

 

      

 

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