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六章 短期で売買するのか、中期か、長期か

投資スタンスの変更は相場に慣れてきてから(その1)

前回に述べたように、投資スタンスを変更するということを簡単にとらえる投資家がいるが、その結果、より有効に利益を確定することができる投資家はごくわずかだ。 
スタンスの変更は、非常に高い自己管理能力が必要であり、相場に慣れていない投資家がおこなうと、大きな損失を被りかねないのである。
成功、失敗、それぞれの例を挙げるのでよく吟味していただきたい。

成功例①

月足チャートなどで現在の株価の位置を確認すれば、日本株全体の大きな上昇の流れの中にあるものの、この数日だけをみれば相場は大きく急落。その急落の流れが上昇に変化した(例えば日足チャートの上値斜線を切ったなど)ところで、すばやく買いを入れる。
もちろん、下落途中の一時的な戻り相場となるリスクを背負っての短期投資だ。場合によってはすぐに利益確定や損切り(手仕舞)をおこなわなくてはならない。

その後、株価は急回復して中期的な上昇の流れに戻ったことが確認できたとしよう。日足チャートなどによる目先の動きが大きく上昇するものの、その後反転下落しても、なかなか下げないで再上昇する動きを確認したときなどだ。
そのようなときにはじめて投資スタンスを変更できる。
目先(日足チャート上での動き)の株価の変動によって売買する短期投資スタンスから、週足チャートで確認できる株価の流れの中で利益確定をおこなう、中期投資スタンスに変更するのである。

そのようにすることによって、日々の上昇下落にとらわれることなく、大きく値幅をとることが可能となる。


 
失敗例①

成功例①と同じように、短期買い投資スタンスで買いを入れた場合を想定してみよう。

目先の安値が底になって大きく上昇に転じる可能性にかけて投資をおこなうのだが、実際には思ったシナリオ通りににならない状況はよくある。ほとんどあるいは全く上昇せずに再度下落しはじめる状況だ。
例えば、直近の安値を力強く下に抜けていくような状況になったのならば、いったん損切り(手仕舞)が基本だ。短期買い投資で、下落途中の戻り相場になりうるという高いリスクを認識した上で、投資をおこなったのだから、必ずその投資スタンスを守らなければならないのである。

しかし多くの個人投資家は、下落してしまうと短期と割り切っていたはずなのに、さまざまな理由をみつけてきては、いつかは戻るであろうと、どっしりと腰をすえてしまうのである。いとも簡単に中期スタンス、場合によっては長期スタンスに変更してしまうのだ。
その結果、本来の(短期)投資スタンスならば最小限の損失で済むものが、その後の投資行動に大きく響くほどの痛手になることが多々あるのである。

このような決断をおこなう際に、個人投資家は、自分を納得させるためにさまざまな理由を考える。その会社の業績は安定しているから優良銘柄だとか、雑誌の推奨銘柄になっているだとか、更には、余っているお金で投資しているから急いで売る必要はないだとか、仕事が忙しかったからだとかなどである。理由などみつけようと思えばいくらでもあるのだ。 
これは、投資スタンスの変更ではなくただの現実逃避でしかない。



 成功例②

中期スタンスで投資をおこなっていたが、株価がかなり上昇した位置から更に急騰した。この半年で大きく上昇してきた値幅と同じ値幅を、ストップ高などを繰り返しながら、たった1週間で上昇したのである。

そのような状況になれば、誰もが利益確定の売りを模索する。長期的には更に大きく上昇する可能性があっても、いったん目先の天井をつけたときに大きく下落する場合が多いのである。
週に一度引線される週足チャートならば、長い上ヒゲをつけたローソク足や、長い陽線の後に長い陰線を伴ったローソク足を出現させるような状況だ。
このような状況になったとき、週足チャートをみながら中期の投資スタンスで投資をおこなっていたとしても、いったん投資スタンスを変更したほうが良い。

毎日の株価の動きを注視し、より高い株価で売却ができるように、日足チャートを観測しながら、中期から(超)短期投資スタンスに移して、俊敏に利益を確定するのである。
売却後、その銘柄を再保有したいのならば、反騰した際に、短期で再投資(買い)をおこなえばよい。より高いパフォーマンスで運用することが可能となろう。


 
失敗例②

個人投資家は、欲しい株に対してはここで買わなければ置いてきぼりをくってしまうとあせって飛びつき買いをする。
その後に少しでも上昇すれば、ここで売らなければせっかくの利益がなくなってしまうと売り急ぐのである。
チャートをみて(テクニカルを利用して)投資をはじめても、それらの自己心理そのものは変わらない。

せっかく、中期買いスタンスの買い場をうまくとらえて株式を購入し、その後、上昇の流れを示す週足チャート上の下値斜線に支えられながら上昇しているのに、早々と降りてしまう投資家が実に多いのである。
目先の動きに振り回されて、わずかな値幅で利益を確定しまっては、何のためにじっくり待って投資をしたのかが、わからなくなってしまう。

買って急騰すると怖くなり、中期的には売りのサインが出現していないのに、簡単に短期投資スタンスに変更してしまうのだ。これでは、いくら買い場をうまくとらえようと、なかなか大きな利益をとることはできない。
例え日足でいったん下落しても、週の終わりでは買い戻されて上昇の流れが継続することはよくあるのである。

自分が、現在どのような投資スタンスで、株価のどの流れをみているのか、どのようになったときに売り、どのようなときに買うのか、しっかり把握しながら投資をおこなうのである。
ここで紹介した失敗例のように、安易に投資スタンスを変更することによって、利益をとり損ねたり、大きく損失を膨らませたりしないようにしていただきたい。

 

投資スタンス(投資開始から手仕舞いまでの期間)の変更は
使い方を間違えば、利益を少なく、損失拡大になりかねない!

 

       

 

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