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六章 短期で売買するのか、中期か、長期か

投資スタンスの変更は相場に慣れてきてから(その二)

投資スタンス(買ってから売るまで、あるいは売ってから買い戻すまでの期間、目安)の変更がいかに難しいか、少しは理解していただけたであろうか。

ただ、実践相場の中で自己管理がしっかりできるようになれば、投資スタンスを変更することは十分に可能だ。その結果、投資におけるパフォーマンスを大きく向上させることもできるのである。

実践の中で、投資スタンスの変更例をみてみよう。

図41、ソフトバンク(東証1部9984)の週足チャートを参照していただきたい。

株価は2003年5月から7月にかけて大きく上昇、その後、売りの力と買いの力が拮抗し、三角保ち合い相場を形成した。
9月になると、その上値斜線Aを力強く上に切って、一つの買い場を形成した。

その後、幾度か上昇下落を繰り返し、週足チャート上に支持される下値斜線Bが引線できるようになる。

株式を購入したばかりの頃は短期スタンスであっても、このようになれば、投資スタンスは中期に移せる。
ところが、その後株価はさらに大きく動き出したのだ。
株価の流れを表しているBの平行線であるCとの間に株価は留まらず、更に急伸しはじめたのである。
日本株全体の中でも、連日注目される程の上昇だ。

このようになれば、Bの下値斜線を下に切るまでは利益を確定しないという投資スタンスは、いったん変更したほうがよいだろう。
急騰すれば、目先の天井を形成した後に一時的かもしれないが、大きく下落する可能性が高くなる。

少しでも高い位置で利益を確定するために、週足チャートを中心とした観測から、日足チャートを中心とした短期の投資スタンスに変更するのである。

単に下値斜線切りだけの売りサインを観測するだけでも、利益は大きく違ってくる。

図42の日足チャートで下値斜線Fを切った翌日、10月22日の寄り付き(始値)で売却すれば6580円で売却できるが、週足チャートでの下値斜線Bを切った翌週、11月10日の寄り付きで売却すると5290円となってしまうのだ。
その差は1290円もあるのである。

この株の半年前の安値が1261円だから、その時の、株価以上の値幅が消えてしまうのだ。


もう一つ例を挙げよう。

図43、光通信(東証1部9435)の日足チャートを参照していただきたい。

2003年から大きく上昇してきた株価(スペースの関係上、未掲載)が、大きく再上昇しはじめたのが2004年8月だ。
その後の株価は4000円台から6000円台へと上昇したものの、20003年に上昇した値幅やその際の上昇していた期間などから、更に大きく上昇する可能性があると考えることは、十分にありうる。

その状況下で、高値Bからの下落時の上値斜線Cを上に切ったDをみて株式を購入したとしよう。
下落の角度や、直前の上昇値幅に対する下落値幅の割合からすれば、下落途中の戻り(一時的な上昇)相場である可能性も十分に考えられ、ギリギリの選択である。

ただ、株価の反転した位置が、このチャート上で引線できる株価の大きな上昇の流れを表す下値斜線Aの位置であったことが、その後ろ盾にあったことはわかるであろう。

その後、株価は上昇するものの、直近の高値Bを上に抜けることなく停滞。買った時に心に決めていた、下値斜線Aを下に切ったらいったん手仕舞うというルールを守りきれず、保ち合い相場Eの中で手仕舞いをしてしまったら、せっかくの投資が無駄になりかねない状況だ。

このように、余程のことが無い限り、いったん決めたルールを変更することは止めた方が良い。
特に、買った銘柄が上昇後に停滞したり、下落したりすれば、人間の心理は揺れ動く。
利益が出ているうちに確定したくなるのは当然だ。

深層心理がそうであるときに、ニュース、雑誌、人のうわさ話、証券会社からの電話など、少しでもネガティブな情報が耳に入れば、それこそ売りたくなるものである。

しかし、それは買い玉を持っている売り方の心理であって、買い方は逆だ。
何とか安くなったところで仕込みたいのである。

この力関係を冷静に分析することは、すでに株式を保有している(売り方軍に入ってしまっている)投資家には、本当に難しい。
だから、チャートをみるのである。
そこには偽りの無い事実だけが現われるからだ。
どうしてチャートを分析するのか、その理由を改めて心に刻んでいただきたい。

チャート上に話を戻そう。
その後、やはり下値斜線Aを割ることなく、株価は大きく再上昇。
6000円近辺で購入した株式は8000円台後半まで上昇したのである。

ここでソフトバンクの例と同じ話をもう一度繰り返そう。
大きな流れAをみて投資したのだが、大きく上昇する過程で、株価の流れは大きく乖離し、Fという流れを形成しだしたことはわかるであろう。
このように、しっかりとした下値斜線を形成し、その斜線を下に切った位置が、大きな流れAよりも、かなり高い位置であったならば、当初考えていたシナリオを変更することは有効だ。

斜線を切った翌日のGで手仕舞うことは何ら問題ない。
ただ、そのまま下値斜線Aを切るまで保有し続けたらどうであろうか。
その際は、下値斜線を切った翌日のHで手仕舞うことになる。その株価の差は、ほとんど無いことがわかるであろう。
「偶然だ」と思っている読者がいることはわかる。しかし、このような形をつけることはよくあるのである。

例えば、下値斜線Fを切った際に急落をすれば、一気に下値斜線Aに近づいてくるのだ。俊敏に利益を確定していなければ、大きな損失だ。
何らかの事情で見過ごしてしまったら、下値斜線Aをしっかり切るまでは保有するというルールに則(のっと)ることが、重要なのである。

「何だ、簡単なことではないか」と思っている方は、実際に投資スタンスを変更しながらの売買をおこなったことがない投資家だ。
たった一人で相場を冷静に分析し、行動し続けることは、非常に難しい。
ただでさえ、買えば怖くてすぐに売りたくなるところで、目先の下値斜線を下に切れば、それこそすぐに売ってしまいがちなのである。
臨機応変に投資スタンスを変更できるようになるためには、まずシミュレーション上で何度も訓練していただきたい。
その状況で、より高いパフォーマンスを上げられるようになったら実践で実行するのである。

相場状況により投資スタンスの変更が自由自在にできれば、投資は怖くない。

 

 

自分の弱い心理に振り回されずに、虎視眈々と相場を観測し、
投資スタンスを変更できるようになれば利益は増える!

 

       

 

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